「月にLOVE」を見つけて

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今日は「新月」。
太古の昔から、「新月の願い事」は叶うという言い伝えも。

お月様と言えば、先日、ちょっとおかしなニュースが。
月の表面に、「LOVE」という文字を見つけた愛媛県の天体愛好家の話です。
人間には「飽くなき探究心」がありますが、夜な夜な「月のアルファベット」を探し続けているとは。

私の探究心の矛先は、「木版画」。
ただ今、とっても気分爽快です。
テニスならサービスエース、競馬なら万馬券、ゴルフならバーディパットが入ったような心地かも。

あれこれトライしていた「満月の光環」が、ほぼイメージ通りに。
凸版の木版画は、「くっきりした形」は得意ですが、フンワリ感は苦手。
されど自然の風景は、境目がボンヤリした「光の陰影」の世界。

昔は、彫り師や摺り師の技倆で、その弱点を克服してきましたが、そのレベルになるには、10年の修業が必要。
そんな時間が残されていない我が身には、あらゆる手段を用いて「実験を重ねる」しかありません。

版木はキャンパス。
彫るでも、塗るでも、作り手の創意工夫で。
今回の「実験」は、ジェッソの塗布。
キャンバスの下地材として使われる乳液状の液体です。

色彩の濃淡は、絵の具を乗せた「版木の水分量」で決まります。
ジェッソの薄膜に、絶妙の水分コントロール効果があることを発見。

おお、やったー!
「月のLOVE」の発見者も、きっとそう呟きながら、一人ほくそ笑んだかも。

「音と色」の不思議な感覚

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馴染みの台湾料理屋さんの壁には、「紫気東来」の額が。

「紫色の気体」で思い出すのは、その昔、化学の実験で使ったヨウ素ガス。
吸い込むと体によくないので、東から流れてきたら、さっさと逃げろということか。
このような「勝手な解釈」は大間違い。

中国では古来、東方よりたなびく「紫の瑞気」は、「吉祥」のしるし。
道教の祖、老子に由来するようです。
伝説の仙人が住む場所は「紫海」で、帝王の宮殿は「紫禁城」。
紫は、高貴で神秘的な色彩として好まれていました。

色と戯れる日々が続く私には、「色にまつわる言葉」に興味を惹かれます。
「真っ赤な嘘」とか「赤の他人」。
どうして「赤」なのか?

調べてみると、赤は「明らか」の意味を持つとのこと。
そう言えば、英語には「白い嘘」(white lie)という言い方が。
こちらは、「罪のない嘘」を指すと。

「黄色い声」もありました。
子供や女性の甲高い声が、何故黄色なのか。
諸説あるようですが、「音色」や「声色」と言うように、音と色には「不思議な相関」があるのかも。

カンディンスキーの抽象画は、「音と色彩」を描いたと言われています。
そう思って観ると、作品から微かな音楽が聴こえてくるような。

世の中には、「共感覚」の持ち主がいるそうです。
音を聴くと色が見える、文字を見ると色が浮かぶという感覚。

人間の視覚から入る情報の80%以上は、「色の情報」。
「色彩の海」のような世界に生きていることを楽しんで。
さあ、今日も作業台のリングで、「色との格闘」を始めよう!

七色の富士山

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昨日、気になるニュースが。
中国で、草間彌生さんの名を騙った贋作展が開かれていると。

草間さんと言えば、水玉模様。
個性溢れる作品が、世界的に評価されている前衛芸術家です。

「何でもあり」の中国らしい話ですが、草間さんは怒りを堪えて、こんなコメントを。
「私の人生をかけた創造をかすめとり、誤った形で皆さんの目に触れている状況は、本当に残念でなりません」。

3年程前に、印象に残ることが。
草間さんが描いた富士山の油彩画を、木版画にしようとの試み。
協力したのが、浮世絵技術を現代に伝える「アダチ版画研究所」。
前衛的絵師と伝統的職人との「興味深いコラボ」です。

心惹かれた出来事は、摺り師による「原画と異なる彩色」への提案。
この世界では、禁じ手かも。
「職人の本分」をわきまえぬ不埒なことのよう。
アダチ版画の中の意見が分かれ、深刻な対立が!

結論は、草間さん本人に見てもらった上で、ご意向に従うことに。
さすが、器が大きい草間さん。
まさに案ずるより、産むが易し。
「あら、この色もいいわね」で、一件落着!

結果的に、赤、青、緑、桃、茶、黄、黒の「七色の富士山」(各色限定120部)が制作されました。
(残念ながら画像は掲載できません)

同じ版木を用いて、どんな色の作品でも作れること。
これが木版画の特徴です。

既に「草間富士山」は、七色すべてが完売とのこと。
ちなみに、当時の価格は84万円(専用額付)。
今なら、銀座のある画廊では、何と540万円のプライスタグが!

「他人の評価」より「自分の納得」

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昨日のプレバト俳句でサプライズ。
「才能あり第1位」に片岡鶴太郎さんが。
いつも辛口の夏井先生が、大絶賛した句は。

「温め酒 あとは巴水の 木版画」

おお!我が敬愛する川瀬巴水を俳句にするとは。

このブログでも何回か書きましたが、巴水は、私を「版画の世界」にいざなってくれた方。
あのスティーブ・ジョブズのコレクションになるほど、日本よりも海外で評価されています。

木版画の評価で、かねがね不思議に思うこと。
出来上がった作品は、絵師と彫り師と摺り師の共同ワーク。
それなのにスポットライトは、絵師だけに。

黒子や脇役や裏方さんは、蚊帳の外。
ノーベル賞のような共同受賞があればいいのに。
私の好みは、バイプレイヤー。
地味な仕事をコツコツこなす職人さんのように。
「他人の評価」よりも、「自分の納得」を大切にして生きる人々。

爽やかな秋晴れの朝。
さあ、今日も絵師と彫り師と摺り師の「一人三役」を演じましょう。

「有明の月」を眺めて

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昨日の朝は、爽やかな秋晴れ。
西の空に「月齢20のお月様」が、ポッカリと浮かんでいました。

風流な昔の方なら、「有明の月」を眺めて和歌を詠むのでしょうが……。
頭に浮かんだのは、空腹のせいか、半月形のどら焼き?
あまりにも不粋なので、ほかを。
おお!空中に蹴り上げたラグビーボールか?

道端で月を眺めていると、通りがかりの人も「何かしら?」と立ち止まって視線を空に。
妙に気が引けて、「朝のお月見ですよ」とエクスキューズ。

それにしても日本人は、月が好き。
月を詠んだ和歌は、数多くあります。
その中から一首。
「月見れば 千々に物こそ 悲しけれ 我が身ひとつの 秋にはあらねど」(大江千里)

確かに「夜の月」は、物悲しさを醸し出すようですが、「朝の月」は雰囲氣一変。
「千々に物こそ 楽しけれ」と、勝手に改変させてもらいましょう。

版木も18版が出来上がり(写真は9枚ですが、裏表彫りなので)。
明日から神無月の11月。
摺りの作業に入って、年内完成を目指します。

一番大切なことは目に見えない

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「道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今さらさらに 何をか思わむ」
(万葉集 詠み人知らず)

風に揺れるススキの野原を歩きながら、「見つからない答」を探してみるのも、秋ならでは楽しみです。

目下の関心事は、「創作活動」。
「自然と生き物」を描く木版画ですが、主題は「その繋がり」。
自然界の「全体調和」の中で、空や海や山も、樹木や草花も、虫や鳥や魚も生かされています。

そう思い始めると、迷い道に。
「目に見えないもの」を「目に見える作品」にしようとする試みか?
「作り手の想い」(世界観)を、カタチとイロで表現するなんて、到底無理でしょう。

写真家の方々なら、分かってもらえるかも。
美しい風景を切り取った写真。
同じ被写体であれば、誰が撮っても一緒でしょうか。
きっと違うはず。
撮影者それぞれに、「写真に込めた想い」があるから。

「星の王子さま」のフレーズに、「一番大切なことは、目に見えない」。

言葉も同じでしょう。
「心に生じた想い」を、言葉で表現することは、至難の技。
例えば、深い感動。
言葉にすればするほど、「言葉の限界」に。
おそらくブログを書かれる方々は、その「歯痒さ」を感じておられるのでは。

世の中はほとんどが、「目にも見えず」、「言葉にもできない」ことで、成り立っています。

金子みすゞさんの「星とタンポポ」に。
「見えぬけれどあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」。

「ある」のだから探し続ける。
それが生きるということでしょうか。

「異形の神々」が世界へ

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最近、ちょっといいニュースが。
全国8県10地域の「来訪神」が、ユネスコの無形文化遺産になるとのこと。

そもそも「来訪神」って何?
その代表例は「男鹿のなまはげ」と聞けば、イメージが湧いてきます。

民俗学者の折口信夫さんが、「マレビト(稀人)」と名付けた「来訪神」。
年に一度、常世の国からやって来る「異形の神様」たちです。

作物の豊穣や人々の幸せをもたらしてくれますが、時には怠け者を戒めたりも。
なまはげは大晦日の晩、恐ろしい形相で家々を訪ねて、
「ここの家の嫁は早起きするがー」。
「親の言うこど聞がね子はいねがー」。

います!います!
勉強はしない、手伝いもしない、部屋は散らかし、忘れ物ばかり。
「もっと言ってよ!」と頼みたくなりそう。

なまはげの他にも「能登のアマメハギ」や「甑島のトシドン」など。
以前、このブログで紹介した西表島のミルク神(実は弥勒菩薩)は外れましたが、沖縄代表は「宮古島のパーントゥ」。
琉球の常世の国は、海の彼方の「ニライカナイ」。

全身泥まみれの「パーントゥ」には、本当にビックリ。
この厄祓いの神は、誰かれ構わず追いかけて泥をなすりつけます。
ご利益があるとしても、思わず逃げたくなりそう。

もうすぐハロウィンのお祭り。
元来は、秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す宗教的行事でした。

日本には、八百万の神がいます。
個性豊かな神様たちが、至る所に。
「みんなちがって、みんないい」。
地元自慢のローカル色を、これからも守り続けて欲しいですね。

「色と遊ぶ」至福のひと時

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昨夜は「雲の合間」から、月齢17の丸いお月様が。
「間」の本来の漢字は「閒」。
門の隙間から、「月の光」が射し込む情景です。

月の優しく柔らかな光は、無意味な対立や矛盾を溶かし去るようなイメージが。
月は心の鏡。
ひときわ美しい月を眺めて、物思いにふける秋を楽しみましょう。

「Halcyon in Moonlight」のカワセミとストレリチア(極楽鳥花)は、ほぼ出来上がり。
数日前から、背景の「満月の夜空」にチャレンジです。

何枚かの版木が彫り終わると、必ず「試し摺り」。
ズレの確認(「見当」の位置を微修正)と「色の組み合わせ」の試行錯誤。

満月は、以前オレンジで制作しましたが、今度はどうしようか?
ピンク、パープル、ブルー、作り手の気分で自由に選択可。
そこが版画の面白い所かも。

木版さえできれば、あとから何色でも乗せられます。
時には、原画と違う色を選ぶことも。
今回は、カワセミの色調に合わせて、ブルームーンに決めました。

先ず、スカイブルーの下地に、セルリアンブルーを重ねると。

う〜ん。青々し過ぎて、今ひとつ。
そこで下地をヘリオトロープに変えて見ると。

おや、深みが出てきた。
よし!本摺りはこれで行くぞ。
だけど、月暈はまだ工夫が足りない。
光の輪をどうやって摺ろうか?

色と遊ぶ至福のひと時。
制作中は、時間を忘れて、こんな独り言が続きます。

「諸行無常」の暮らしあり

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朝晩寒くなると、普段はオンザロックで飲む芋焼酎もお湯割りに。
おでんや鍋物が恋しい季節の到来です。

最近とみに感じるのは、「季節の移り変わり」の速さ。
そんなに急がなくてもいいのに、慌しく次のシーズンが。
季節に限らず、世の中全体で「余韻を味わう間」が、短くなっているような。

古来より、日本には「間の文化」がありました。
能や雅楽の伝統芸能から、剣道や柔術、歌舞伎や落語の世界まで、名人とは「間の取り方」がうまい人。

和風建築や日本庭園もしかり。
絵画や書の世界でも、「余白の美しさ」が決め手です。
この摩訶不思議な「間の感性」とは一体、何なのでしょうか。

例えば、龍安寺の石庭。
広い白砂の「空間」に、15個の石を配しただけで、ほとんどが「余白」。
それなのに、あの言葉にならない美しさはどこから?

茶道具の他には、一幅の掛け軸と花一輪を飾る茶室の「しつらえ」。
意味ある構図として、「真っ白な空間」を残す水墨画の世界。

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」。
ご存知の「平家物語」です。
鐘の音が消えた後にも、残る響き。
「音と音」、そして「言葉と言葉」の間に生まれる「空白の時間」にも、心の波動は続きます。

「空間」にも「時間」にも「人間」にも、「間」の文字が。
ということは、人間においても「余白の美しさ」や「余韻の味わい」が大切ということか。

されど、ままならぬ現実が。
部屋は荷物で埋め尽くされ、よろず雑用で時間に追われる日々。
飲み過ぎの前後不覚で、記憶が飛んだ「空白の時間」があるのみかも。

嗚呼!「諸行無常」の暮らしあり。

花に想いを託す

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「秋の花」のエンディングは、桔梗と曼珠沙華。
この所、重めの話が続きましたので、あえて軽いトーンで。

桔梗の花 咲く時ぽんと 言ひさうな

加賀千代女の素直で優しい人柄が伝わってきます。
つるべに巻き付いた朝顔を、”Let it be”として、もらい水に行くようなお方ですから。

桔梗の英名は「balloon flower」。
確かに、蕾は「紙風船」みたい。
開花する時、本当にポンと音がするのかどうか?
実際に確かめたくなりますよね。

膨らんだ蕾を指で突いてみたら?叩いてみたら?
そんなイタズラ心に誘われてか、河野裕子さんが詠んだ歌。

魂抜けの できうる花か 指先で つついてみれば 桔梗はひらく

意外に「エヘッ」と舌を出してそうな、お茶目で無邪気な一面が感じられ、ほのぼの気分になります。

それにしても、
紙風船が割れると「五芒星」の姿に。
自然のチカラは凄い!

次は夏目漱石の句です。

曼珠沙華 あっけらかんと 道の端

あの妖しくて不気味な花を、こんな風に切り取るとは……。
「あっけらかん」という軽妙な表現は、漱石らしい「突き抜けた感性」があればこそ。

花に想いを託す。
古き時代から受け継がれてきた日本の文化です。
万葉集で植物を詠んだ歌は、3分の1の1500首もあるそうな。

心を揺さぶる「様々な想い」。
いつもいつでも、優しく受け入れてくれる「花さんたち」に感謝!