いつの頃からか、滅多に会わなくなった生き物がいろいろと。
例えばオニヤンマやゲンゴロウ、アメンボやカタツムリ等々。
子供の頃にずっと、背中に貝殻を背負った姿を見て、カタツムリはヤドカリの仲間と思い込んで。
調べて見ると、カタツムリの殻は生まれた時から備わっているそうな。
成長に合わせて、殻を住み替えるヤドカリと異なり、自力で住処を建て増していくと。
殻の主成分の炭酸カルシウムは、どこから手に入れるのか、どうやって幾何学的な螺旋模様を描くのか、右巻きと左巻きの違いはどうしてか?
カタツムリには、不思議がいっぱい。
カタツムリで思い出す一冊の絵本が。それは「でんでんむしのかなしみ」(新見南吉)。
ある日、「背中の殻の中に、悲しみが一杯詰まっていること」に気がついた一匹のでんでんむし。
不仕合せを背負った自分は、「もう生きていられない」と悲嘆して、次々と友達に泣きすがってみたけど。
誰に訴えても返ってきた言葉はすべて同じ。「あなたばかりではない。私の背中にも悲しみは一杯」と。
そうなんだ!「悲しみは誰もが持っている。自分は自分の悲しみに堪えて生きていくしかない」と気付いたというお話。
この絵本は、上皇后美智子さまが、「国際児童図書評議会」(ニューデリー)の基調講演で紹介されて。
「生老病死」。確かに人は、生まれてから死ぬまで、大小様々な「悲しみ」と付き合い続けるようで。
だったら、眼を閉じずに「受け止めて」、あるがままを「受け入れて」、ポジティブ思考で「受け超えて」。
「他者の悲しみ」に、優しく自然体で寄り添う美智子さまの生き方は、「でんでんむしのかなしみ」に支えられているのかも。