金木犀の香りに誘われて

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嵐の前の静けさ。
この時期ならではの「金木犀の香り」に誘われて、近場にウォーキング。

嗅覚は不思議な感覚です。
ある匂いが記憶を蘇らせる現象を「プルースト効果」と言うそうな。
干し草の匂いが懐かしき故郷を、プルメリアの香りが南国リゾートのホテルを、ほのかなフレグランスがその当時に憧れていた方を。

フランスの作家マルセル・プルーストの場合は、紅茶に浸したマドレーヌの香りがトリガーのよう。
確かに食べ物の匂いは、記憶のフラッシュバックに効果的です。

嗅覚は五感の中で唯一、原始的な感情を司る大脳辺縁系と言う古い皮質に繋がっているとのこと。
そう言えば、家内が絶食中に異常な程、食べ物の匂いに敏感になり驚いたことが‥‥。
餌を探し当てる嗅覚は、生き物の生存に欠かせない本能のようです。

そろそろ雨風が強くなる気配。
玄関のドアを開けるとカレーの匂いが。
蘇ってきたのは、学生時代の空腹を満たすカレーライスを食べた「学食の思い出」でした。

「疎」と「密」の狭間で

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絵描きは、常に「疎」と「密」の狭間で揺れ動いているようです。
私の木版画のモチーフは「自然と生き物」。
眼に映るそのままを描こうとすると、どんどん「密」の世界に。

しかし人為の限界。
どうやってもあの「精緻な美」には届きようがありません。
やむなく省略を。
手抜きかどうか分かりませんが、拠り所は「美の感動」を表現できたか。

物理学者の大森荘蔵さんは、答えを密画と略画の「重ね描き」に求めました。(「知の構造とその呪縛」)
科学的描写(密画)は、原子の集まりである物質の客観的な「形と運動」。
知覚風景(略画)は、主観的に感知する「色や匂いや手触り」。
「物と心」。
この両極の世界観は調和するのでしょうか。

情報システムの世界には、「疎結合」と「密結合」という用語があるようです。
人と人との関係も同様。
自立する個が緩やかに他者と繋がる「疎な関係」か、他者に依存して繋がり合う「密な関係」か。
漱石流なら、「密に働けば息苦しい。疎に棹させばもの寂しい」。
おそらく現実は、両者のバランスなのでしょう。

ハワイから届いた「爽やかな風」に刺激されて、「疎」と「密」のバランスが気になる「ストレリチアの版木」を彫り直すことにしました。

必要は「発見」の母

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探していたものを見つけた時の「ヤッター感」は、万人共通の喜びでしょうか。
木版画のような職人仕事をしていると、時々「こんな道具がないものか」と探し回ることがあります。

最近ずっと探していたのは「先端が球状の棒」???
使い道は「拭きボカシ」の小道具。
絵の具を乗せた版木の一部を濡れた布で拭き取ることで、色の滲みを用いた「ボカシ効果」の技法です。

指でもいいのですが、細かい部分は難しく何か小道具があればと。
先端が尖っていたり、角張っているものは、柔らかい表現に不向き。
「球状がマスト」と、既製品を探し求めることにしました。

本気で探すと、候補グッズは現れてくるものです。
まずは木琴のマレット(ばち)。
木製、樹脂製よりもゴム製が良さそうですが、球サイズが大きすぎかも。

次に思い付いたのが、カクテルをかき混ぜるマドラー。割れのリスクがあるガラス製より金属製がベター。球サイズはちょっと小さめか。
他にもこんな道具を新発見。
壁やタイルを叩く打音診断棒。
絵筆の直線描きをサポートする溝引き棒。

較べると「帯に短し襷に長し」の感ですが、実際にいくつか試して見ようかと思います。
「ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなく”穴”である」。
まさに「モノ」ではなく、「コト」の価値による購買動機です。

我が家では、こうやって道具が増え、仕舞う場所が手狭になり、またまた家内のお小言が‥‥。

烏帽子職人の話から

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昨日の「ニッポン行きたい人応援団」は、「1000年の伝統技”烏帽子”を愛するアメリカ人」。
日本人にとっては烏帽子は忘れ去られた存在ですが、この技術を伝承する職人さんが、まだ全国に数人残っているとは‥‥。

番組が取り上げたのは、富山市の烏帽子専門店。
師匠の四津谷さんの下で修行した38歳の若き烏帽子職人、四日市さんの話に興味を惹かれました。
烏帽子作りに適した軽くて丈夫で加工がしやすい原料は、江戸から明治時代の和紙の再生利用。

現存する最古の和紙は、正倉院に保管されている1300年前の戸籍帳。驚きの耐久性や保存性です。
和紙がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも納得。

考えてみれば、1000年以上の耐久力を持つ原材料は何があるでしょうか。
法隆寺の五重塔は、樹齢1000年以上の檜で造られ、1300年も建っています。
鉄やコンクリートの近代建造物の耐用年数に比べて、はるかに頑丈です。

日本が誇る自然由来の「木の文化」、「紙の文化」。
知れば知るほど奥が深く、興味は尽きません。

選んだのは極楽鳥花

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ただ今、カワセミシリーズ第2作を制作中。
タイトルは「Halcyon in Moonlight」、副題を「月華の調べ」と名付けました。

主役のカワセミと脇役の満月。両者と協奏する「海辺の花」は、何がいいでしょうか。

トロピカル風ということでハイビスカスやプルメリアも魅力的でしたが、本作品で選んだのは極楽鳥花。
学名のストレリチアの方が、日本では馴染みがあるかもしれません。

鳥のトサカやクチバシを連想させるユニークな形。花弁のブルーとガクのオレンジがカワセミと共通する鮮やかな色彩。
英名の「Bird of Paradise」も素敵です。
ということで原画が出来上がり、彫りの工程に。

一作ごとに新たなトライアルを重ねます。本作品からは「和紙へのこだわり」。
和紙の産地としてよく知られた越前、土佐、美濃等々。どれが作風に合うか、いろいろと試してみます。

犬も歩けば骨を

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昨日で「Animal Planet2018」が終了。
最終日の日曜日は、さすがに人出も多く賑わっていました。

何せ初めての展覧会。四谷三丁目に通った五日間で得られた「貴重な学び」がありました。
展示レイアウト的に、作品サイズは多様な方が目を引くこと。来場者の視点で準備された什器類(小テーブル、感想ノート、名刺やプロフィール紹介メモ等)が意外に役立つこと。販売目的の場合は、小さくて手頃な価格のミニ作品やポストカードが売れ筋なこと等々。

最大の学びは「動けば何かが起こる」と、あらためて認識させられたこと。
まさに「犬も歩けば棒に当たる」(良い方の意味)でした。

感想ノートの中に、この上なく嬉しいメッセージが残されていました。
「青色の額のフクロウのキリッとした所や世界観が素敵です」(原文のまま)。
お書き下さった方は、日本画家で神宮前ギャラリーオーナーの西尾さつきさん。

何よりも驚き、感激したことは、作り手の「世界観」が伝わったという事実。このことだけで我が心は満たされました。
西尾さんの言葉に励まされ、また新たな創作への意欲が湧いてきました。

ちなみに「犬も歩けば‥」は、英語で「The walking dog finds a bone」とのこと。
いつの日にかDeersを題材にした作品を、神宮前ギャラリーの「鹿展」に出展できたらと‥‥。
他にも日本橋のあるギャラリーの方から「四人展」のお誘いを受けたり。
動いたおかげで、「新たな目標」を授かったことに感謝します。

展覧会に作品搬入

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明日から始まる「Animal Planet 2018」の準備で、作品を搬入しました。
四谷三丁目の駅から住宅街を少し歩くと突然、それらしき建物が。

何せ初めての展覧会出展。
勝手が分からず、他の方々のやり方を見様見真似でセッティング。
何とかそれらしく仕上がりました。

明日から本番。来訪されたお客様の反応が楽しみです。
気に入ってくれた方が現れればいいのですが‥‥。

帰路、四谷三丁目の交差点にある「消防博物館」に寄り道しました。
消防の歴史に関する展示物は、一見の価値ありでした。

版画家と料理人

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最強の台風上陸、北海道の大地震と災害が続いています。被災された方々に、お見舞い申し上げます。

カワセミシリーズ次作の制作を開始しました。目下の作業は下準備。
昨日は、彫刻刀を砥石で研ぎ、版木20枚の両面を紙ヤスリで研磨しました。

木版画家にとって「彫刻刀は絵筆」で「版木はキャンパス」。
とっても「地味な力仕事」ですが、作品の出来映えを左右する大事なプロセスです。

作業中に時々、板前さんの仕事を連想します。美味しい料理を作るために包丁を研ぎ、食材の吟味と下ごしらえをしっかりと。
「版画家と料理人」は似た者同士かもしれません。

版木を平滑に磨く工程は、同時に木理を目視でチェックする作業でもあります。
一枚一枚が異なる自然由来の板目。この波型や節目をどのような図柄に活かそうか、この版木を縦に使った場合、横に使った場合のイメージを描き、図柄との相性を考えます。

「空の雲」にはあれが、「海の波」にはこれが‥‥。
「鳥の羽毛」はどれにしようか?
「岸の岩肌」はそれでいけるか?
おそらく料理人も食材を選びながら、そんな風にひとりつぶやいているのかもしれません。