「眼」にこだわって

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新しい作品は仕上げの段階に。いつものように最後の摺りは「眼」。
「目は口ほどに物を言う」、本当に眼で印象がガラリと変わります。
今回もこだわって、3度版木の彫り直しを。

「画龍点睛」という中国の故事があります。
南北朝時代のある画家が描いた四匹の金龍には眼がなかったそうな。
民衆から懇願され、やむなく二匹だけに描き込んだところ、天空に飛び去ってしまったという不思議な話です。

物事を完成するために、最後に加える大切な仕上げ。
仏教の世界なら「開眼法要」と。
仏像を作る時、最後に眼を描き込んで「魂が宿る」と考えられています。

「Halcyon in Sunset」もやっと「眼」が入り、盆前には仕上がりそうです。
私のカワセミ(翡翠)は、幸いにも天空に飛び去らず、夕暮れの海辺に佇んでいます。

版木と語らう

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版木は用いられた「木の素材」によって特徴が異なります。浮世絵の時代には硬くて精緻な彫りに適した山桜が使われましたが、今では希少で高価なため桂や朴の無垢板に。

多くの版木を使う多色摺りや大きなサイズが必要な場合は、合板材のシナベニヤが重宝します。扱いやすく手頃な価格ですが、難点は「微細な彫り」には向かないこと。

細心の注意を払って彫っていても、大事な箇所がポロッと欠け落ちてガックリ。仕方なく接着剤で修復したりしますが、摺りの工程で剥がれるかもと不安が残ります。時には予防措置として、水で薄めた木工用ボンドを版木に染み込ませる方法も。

自然由来の版木には、一枚一枚に「個性的な顔」があります。紙ヤスリで研磨しながら、柾目か板目か、順目と逆目の方向、年輪や節の形状を見つめ、図柄の配置、彫刻刀の入れ方、絵の具の乗り具合等を尋ねます。まるで「版木と語り合うか」のように。

版画家にとって、版木は絵筆そのものです。作品の出来映えは「版木の活かし方」次第。
版木それぞれの「味わい深い木理」を眺めながら、思いを巡らせる毎日です。

色に遊ばれて

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「Halcyon in Sunset」。制作中の作品のタイトルです。副題を「静けき祈り」と。
ギリシャ神話に語り継がれるハルシオンは、荒波を鎮める鳥。カワセミならずとも、水平線の彼方に沈みゆく夕陽を見つめていると、不思議に「祈りの心」を思い出すようです。

夕映えに染まる橙色の空、青紫の海、赤紫に輝くアカショウビン、多様な緑の亜熱帯植物等々、色彩の選択に試行錯誤を繰り返す日々が続いています。

木版画では、色の重ね摺りとボカシの技法が多用されます。
ピンクの下地にイエローを重ねると黄系オレンジになりますが、その順番を逆にすれば赤系オレンジ色に。そのどちらかをチョイスするかで悩みます。

ボカシは浮世絵時代からの伝統技法。バレンの使い方でグラデーションを表現する「摺りボカシ」、平刀の彫りで緩やかな傾斜をつける「板ボカシ」、色を乗せてから部分的に布で拭き取る「拭きボカシ」、版木に絵の具を垂らして摺る「当て無しボカシ」等々。匠の技は奥深く、果てしなく続く道のようです。

木版画の摺りの工程で、「色で遊ぶ」ことを楽しみつつも、実際には「色に遊ばれている」と感じる日々を過ごしています。