「スリリングな偶然」を

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時折、「何故、木版画なの?」と尋ねられることがあります。確かにファインアートの表現技法には多様な選択肢がある中で、どうして木版画を「好きで面白い」と感じるのでしょうか。
木版画は「自然の素材」からできた道具と材料を使って、100%の手作りで制作します。版木を彫る時のサクッ、サクッという音や木の香りが心地よく感じられ、摺りの作業では、バレンを包む竹皮の感触や和紙独特の風合いと肌理の美しさを楽しむことができます。自分も伝統的な「木の文化、紙の文化」に愛着を持つ日本人だからということでしょうか。
振り返って思うに、いわゆるアーティスト風ではなく、職人流の作業が私の好みに合うのかもしれません。木版画作りでは、宮大工や研ぎ師や染織工のような技能が求められます。ベレー帽よりも、捩り鉢巻きのスタイルが好きということでしょう。
さらにもう一つ、木版画は紙に直接描く絵画とは異なり、版木を介しての間接的な表現方法です。一枚一枚を手作りで摺り込みますが、様々な変数の組み合わせなので、その出来映えは偶然に左右されたりもします。摺り上がった紙をオモテに返して観る瞬間の「ワクワク感」や「ドキドキ感」は、作り手の醍醐味です。「スリリングな偶然」を楽しめるアート、それが木版画の魅力だと思います。

Owl in Violet

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制作中の「Owl in Violet」は、版木の彫りが出来上がり、いよいよ「摺りの工程」に入ります。紫を基調にどんな色の組み合わせにしようか、あれこれ悩みながら考える至福のプロセスです。
最初の原画の色合いにこだわらず、版木を用いて新たに絵を描く気分で彩色できることも木版画の醍醐味です。難しい色彩理論を学んで、「個の色」の色相と彩度と明度を選び、「全体の配色」をロジカルに組み合わせる方法もありますが、浮世絵の時代には、そんな理論抜きでも見事な作品が生まれました。理屈以前に、制作者の感性ありきということでしょうか。
実際の摺りの場面では、イメージした色が出なかったり、配色のバランスがしっくりこなかったり、納得がいかずに何度か摺り直すこともあります。
摺り上がりの出来不出来は、絵の具と水の配合、糊の混ぜ加減、和紙の湿り具合、バレンの選択と擦り方等、各要素の組み合わせで決まります。論理と感性の間を行きつ戻りつしながら試行錯誤を重ね、作品の完成に近づいていくプロセスを楽しんでいます。