農業に家事に芸術に勤しむ魚

http://www.biodesign-japan.com/wp-content/uploads/sites/1887/2014/12/header20170227073715_332575177.jpghttp://www.biodesign-japan.com/wp-content/uploads/sites/1887/2014/12/header20170306093912_593744456.jpg
今日は大晦日。今年最後のブログは、年末年始も休むことなく仕事や家事に勤しむ魚たちの話だ。先ずは農業を営む魚から。「ダーウィンが来た」でも紹介されたが、沖縄のサンゴ礁の海に住むクロソラスズメダイは、自分専用の畑で“農業”に専念している。地球上でその畑にしか存在しない特別なイトグサの栽培だ。他種の藻が繁殖すれば丹念に取り除き、食害をもたらすヒトテやウニを追い払う。長い年月をかけて自分たちに最適な品種を選び出し、改良を重ねながら「Myイトグサ」による自給自足システムを作り上げた。以前、昆虫のハキリアリが営むキノコ農園を紹介したが、個体の生命維持と種の存続に不可欠な「喰うこと」に対する生き物たちの知恵と工夫には感服する。
次はオビテンスモドキの寝床作りだ。ベラ科のこの魚は、砂のマウンドにサンゴ片を積み重ねて寝床を作る。30分もかけて数十個のサンゴを運び、日が暮れると入り口から潜り込み就寝する。普通の魚には動かせないような大きなサンゴの城壁で、睡眠場所を安全に守っている。他にも自分専用の“寝袋”を作って睡眠をとる魚もいる。スズキ目のブダイの仲間だ。夜になるとエラから粘り気のある透明な液体を出して全身を包み込む。天敵のウツボから身を守るために、自製の粘液で体から出てくる臭いを隠すと言われている。魚たちも安全で快適に「寝ること」への努力を怠らない。
喰うことと寝ること、その次は何だろうか。落語の前座噺の「寿限無」によれば、「食う寝る処に、住む処」と続くが‥‥。以前、奄美大島の海底で発見された「謎のミステリーサークル」をご存知だろうか。砂に描かれた直径2メートルほどの円形模様は、まるで人間が道具を使って作ったような芸術的な幾何学模様だ。誰が、どうやって、何のためにこの美しいミステリーサークルを作ったのか。その謎は解明された。制作者はシッポウフグの一種で、「産卵のために作った巣」であるとの研究論文を、千葉県の研究者や地元ダイバーらが英国科学誌に発表した。 となれば「寿限無」のサカナ版は、「喰う寝る処に、産む処」だろう。体長10センチ程度のオスのフグが、胸びれや尾びれを使って丁寧に砂地を掘り進め、 一週間以上かけて円形構造物を制作する。完成後にパートナーのメスが円の中心部で産卵し、オスは孵化するまでの間、近くで卵を守り続けるとのことだ。そうだと分かった後もなお、さらなる謎は深まる。設計図面もなく、定規も分度器もコンパスも持たない魚が、どうしてこれほど精緻な幾何学模様を描けるのか、どんな方法でこのような造形能力を身につけたのか、生き物の不思議は尽きることがない。
悲惨な事件や事故が続く人間社会、新しい年は平和で穏やかな1年になりますように。