ニョロニョロ系の好き嫌い?

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前回のウミヘビを受けて、ニョロニョロ系の話題を続けよう。海外でボートに乗り合わせた欧米人ダイバーと一緒に潜ることがある。そのような場合、現地ガイドがしきりに見せたがる魚種がウツボだ。どうやら欧米人にはウツボ好きが多いらしい。ウツボには申し訳ないが、日本人ダイバーにはあまり人気がない。見ての通り、爬虫類のような体色とヌルヌル感、顎まで裂けた口と鋭く尖った歯、岩穴に身を隠し獲物を待つ鈍重な動き等、チャームポイントが見当たらない。ウツボは「海のギャング」とも呼ばれ、魚類、甲殻類、頭足類等を獰猛な口で捕食する。顎の構造がエイリアン風で、噛み付いた獲物を食道に引き込むための「咽頭顎」(口の奥にあるもう一つの口)を持つ。もしも指を噛まれたら、慌てて引くと食いちぎられるので、奥に押し込む方が助かると言われている。
欧米人に向かって「そんなウツボの何処が?」と言ったら、大いに反論されそうだ。ウツボはウナギ目に属し、日本人が大好きなウナギやアナゴ、ハモの仲間だ。単に美味しい魚は好きで、不味ければ嫌いと言うことか‥‥。確かに同じニョロニョロ系でも、ウナギやアナゴ、ハモを悪く言う日本人はいない。ディベートが劣勢な時は、話の土俵を変えるしかない。同じウツボの中でも、美しい色合いや愛敬ある顔立ちで好かれているハナヒゲウツボもいる。英名ではRibbon eelと呼ばれ、雄性先熟型で性転換する。成長に応じて体色が3つのカラーに変化する所も面白い。黒色の幼魚が成魚になると鮮やかな蛍光ブルーに、メスに転換した後には黄色に変貌する。
アナゴが好物の日本人は多いが、ウナギ目アナゴ科に属するチンアナゴはご存知だろうか。珊瑚礁近くの砂底の穴に生息し、上半身だけ海中に出して動物プランクトンを捕食する。多数のチンアナゴが群生する海底の光景は、まるで風に揺れるススキ林のように壮観だ。英名はSpotted garden eelだが、和名は顔付きが日本犬の狆に似てることから名付けられた。アナゴのように天婦羅や寿司ネタにして美味しいかどうかは知らない。
ニョロニョロ系の好き嫌いから飛躍するが、「怪獣の好み」もお国柄によって異なるようだ。 日本人が好きなゴジラやモスラやガメラ、ウルトラマンシリーズのバルタン星人やカネゴンと較べて、欧米人が好きなキングコングやクラーケン、エイリアン等は、どこか趣きを異にする。その違いが何に由来するのか考えてみるのも面白い。

サメより怖い海の生物その2

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サメより怖いタコ、クラゲ、ヒトデの次はカイの出番だ。その代表は何と言ってもイモガイだろう。外見は何の変哲もない普通の巻貝だが、遭遇したくない海の生き物NO1と言われている。イモガイ科に属するアンボイナガイの猛毒コノトキシンは、人間なら30人程度の致死量に相当する。このカイのハンティング方法は、エイリアン的でおぞましい。長く伸びた吻の先端から歯舌と言われる毒銛を発射し、獲物を瞬時に麻痺させて捕食する。吹き矢のような飛び道具で猛毒を注入するやり方だ。イモガイは日本近海の珊瑚礁周辺や砂浜等、身近な場所にも棲息している。貝殻の色や模様が美しいので、見つけるとつい持ち帰りたくなる。素手で掴んだりポケットに入れた時に毒銛を発射されたらアウトだ。イモガイの毒には抗毒血清がなく、重篤な場合は血圧低下や全身麻痺を招き、呼吸不全により死に至ることもある。
プロの漁師やダイバーからサメ以上に危険だと言われている魚がいる。英名ではNeedlefishと呼ばれるダツだ。1.5m程の中型サイズだが、槍のような鋭利な顎が武器だ。この魚は光に敏感に反応し、光源に向かって猛スピードで突進する習性がある。狙った獲物の鱗の反射光をターゲットに襲いかかる行動だ。夜に「電灯もぐり漁」をする漁師、ナイトダイビングでライトを照らすダイバー、照明の側で釣り糸を垂らす夜釣り客等が襲撃されている。ニードルならぬ鋭利な槍で突き刺され、無理に引き抜き出血多量で死亡するケースもある。
最後はウミヘビだ。陸地でも不気味だが、海中をニョロニョロと泳ぐ姿はなおさら気味が悪い。ウミヘビ科には、全く異なる2系統があるのでややこしい。魚類ウナギ目に属する科と爬虫類有鱗目に属する科だ。魚類のウミヘビはウナギやアナゴと同様に毒を持たず安全だが、コブラの仲間が進化して海生に適応した爬虫類のウミヘビは有毒だ。この毒は神経毒の一種で、咬まれると麻痺が起こり呼吸不全や心停止を招く。ちなみに魚類はエラ呼吸だが、爬虫類は肺呼吸のため時折、海面に上がらなければならず、海辺の岩場や砂浜付近にも出没するそうだ。「触らぬヘビに祟りなし」が上策だ。

サメより怖い海の生物その1

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ダイビングの話をすると、よく「サメが怖くないか」と問われる。実はほとんどのダイバーは、サメに出会うと「今日はラッキー」と大喜びする。一昔前にスピルバーグ監督が映画化した「ジョーズ」のおかげですっかり悪者にされてしまったが、実際に人を襲うサメの種は全体の1割程度にすぎない。残り9割の「善良なサメたち」は全くもって気の毒だ。獰猛なホオジロザメやイタチザメ以外のサメであれば怖がることはない。むしろ海の中ではもっと危険な生き物に注意を要する。
最初に紹介するヒョウモンダコは、唾液に強力な神経毒テトロドトキシンを持ち、相手に噛み付いて毒を注入する。人間でも噛まれると呼吸困難に陥り、酸素不足から心停止に至る場合がある。元来は熱帯性だが、地球温暖化の影響から生息域が北方に広がり、最近では東京湾にも棲息しているとのことだ。タコが持つ高度な知性に加えて、強力な殺傷兵器まで備えたら完全無敵だろう。鮮やかなルリ色のリング紋様のタコに出会ったら、近づかないのが身のためだ。
さらに身近な海の危険生物といえばハブクラゲだ。南の海で泳げば、誰でも遭遇する可能性がある。ハブの数倍と言われる毒性を持つ刺胞の毒針に刺されると、激痛を伴い6時間後に水泡ができ12時間後に細胞壊死を引き起こす。体が半透明で目視しにくく、かなりの速さで移動するため未然に接触を防ぐことが難しい。沖縄の海水浴場では侵入防止ネットによってリスクを軽減している所もあるが、ハブクラゲによる死亡例も含む事故は毎年のように発生している。
悪名高きオニヒトデの毒棘によるアナフィラキシーショックで死亡した事例もある。ダイバーは海中でオニヒトデを見つけたら、サンゴを守るために思わず駆除したくなる。しかし余程その取り扱いに熟練していなければ、体表面にある多数の毒棘に刺されるリスクが大きい。刺された場合、治療法は速やかにポイズンリムーバーで吸引するしかない。石やナイフで細かく切り刻んでも、その破片から個体が再生するので始末に負えない。ダイバーにとって「珊瑚礁の破壊者」であるオニヒトデは憎い敵なのだが、返討ちにあっては元も子もないだろう。